髪のプロと学ぶ、乾癬と頭皮とケアのお話
頭皮と髪のプロだから知っておきたい
「乾癬」の知識
第4回美容師たちよ、「乾癬」を理解して、患者さんの心の扉を開こう!
ACQUAディレクター
小村 順子さん
とちぎ乾癬友の会、一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD乾癬啓発普及協会
山下 織江さん
第1回より4回に渡り、「乾癬」という病気について取り上げてきました。ぜひ、多くの方に4回の記事を読んでいただき、乾癬について理解していただきたいです。もしかしたら、あなたのお客様の中にも、病気のことを伝えられずにいるかもしれません。
今回は前回に引き続き、乾癬の患者さんでもあり、とちぎ乾癬友の会や一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD乾癬啓発普及協会で活動をしている山下織江さんをお迎えして、患者さんの悩みや美容師さんに求めることを中心に、ACQUAディレクターの小村順子さんと対談していただきます。
頭皮のトラブルを持つ人は大勢いる。
乾癬もその一つ、というだけ。
―――「乾癬」の患者さんは、美容師さんに病気のことを伝えられない、というお話を前回伺いましたが、美容師さんからすると、どういう風に感じるものですか?
小村 意外と美容師から見ると、頭皮にトラブルがある人は、たくさんいます。アトピーや円形脱毛症の方もいれば、ただ頭を洗ってなくて、頭皮がベタベタな状況で美容室に来る方もいます。だけど、それに対して、何とも思わないです。その方の頭皮や髪の状況を正しく把握したいとは思っていますけど、「汚い」とか「不潔」とは思いません。
山下 私は頭皮に乾癬がありますが、耳にもできやすいんです。だから、美容室に行くと、シャンプーの後、耳もタオルで拭いてくれるじゃないですか。それもドキドキする瞬間で、美容師さんに「汚い」と思われてしまうんじゃないかと。そんなことはないんですね。
小村 そうですよ。皆さんが思っているほど、美容師は何とも思っていませんよ。たとえば、フケがいっぱい出ているなとは思いますが、それを考慮して施術方法を考えるだけです。それで、頭や髪を触りたくないと思うことはないです。
山下 髪のプロから見ると、そうなんですね。新しい視点をいただきました。乾癬って、主に皮膚に症状が出る病気だけど、見た目にも影響するので、すごく精神的に追い込まれてしまうんです。私だけでなく、乾癬の患者は自尊心が低くて、周りの目を気にし過ぎているんですよね。
小村 お互いの歩み寄りが必要ですね。美容師は乾癬の病気のことを学んで、その知識を持っていることを伝えること。そして、患者さんは言いづらいかもしれないけど、勇気を出して話してみる。私も恥ずかしながら、乾癬のことを知らなかったので、こうしてリアルにお話を伺って、ほかのお客様と一緒だなと思いました。
山下 私はたまたま乾癬になって、その病気にとらわれていましたが、小村さんのお話を伺って、頭皮のトラブルはいろいろあって、乾癬もその中の一つにしか過ぎないんだと思いました。ただ、慢性の病気だということを、知っていただけると嬉しいです。
小村 そうですよね。円形脱毛症でも、全然治らない人がいますよ。だから、治っていなくても、私は何も言いません。言われたら、気になってしまうじゃないですか。それよりも、お客様の心を軽くするように心がけています。美容師がみんな、そう思えば、乾癬の患者さんも、美容室に来るのがラクになると思うんですよね。
乾癬だから出来ない美容の施術はない。
だた、状況をしっかり判断することが大切。
山下 話は変わるんですが、乾癬だとパーマやヘアカラーはできないのでしょうか? というのも、私は大学生の時に、パーマをかけて、髪を染めたいと思って、美容室で施術してもらったことがあります。ただ、乾癬のことを伝えられなくて、その後、乾癬の症状がひどくなってしまったので、「私はもう髪を染めたりしちゃいけないんだ」と思いました。
小村 症状がひどくなると、確かにそう思ってしまいますよね。でも、もし、お医者様からヘアカラーやパーマを施術してはダメだと言われていなければ、頭皮に刺激を与えないで施術する方法もありますから、乾癬の患者さんたちが要望されるなら、チャレンジしていきたいですね。可能性が広がって、ハッピーになる人が増えてほしいです。
山下 そう言っていただけると、若くて乾癬を患っている人たちは、いろいろな髪型に挑戦してみたいと思うから、勇気が持てると思います。
小村 勇気をもって、いろいろと相談してほしいですね。美容師は特殊な仕事。お客様にとって、友達でも家族でもないのに、10年とか20年とか長い間、しかも定期的に会う関係。さらに頭皮や髪にも触れる。だからこそ、お客様との信頼関係が、とても大事なんです。誰にも言えないことを話してくださいます。家族の悩みだったり、恋愛のことだったり、病気のことも。だから、美容師は髪を切って終わりではない。お客様の人生と並走していきたいと、私は思っています。
山下 乾癬を患うと、多くの人が美容室を嫌厭するのは、小村さんの話を聞いて、その裏返しだなと思いました。すごくつながりが深いんですね。だから、みんな美容室は辛いと言うんですね。
小村 美容師は髪型を通して、お客様を支えたいと思っているので、それを乾癬の患者さんにも信じていただきたいですね。そして、お互い一歩踏み出せたらいいですよね。
山下 そうですね。美容師さんは頭皮や髪のプロだから、乾癬を患う私たちも、心を開いて相談したほうがいいと思いました。勇気をもって病気のことを話して、コミュニケーションでさまざまなことをクリアしていき、「こうなりたい」という自分になるために、前を向くべきですね。
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