治療を続けているのに、なかなか良くならない
乾癬患者さんへ
みなさま、こんにちは。
桜仁会いがらし皮膚科東五反田の五十嵐です。
乾癬は精神的にも、身体的にも、ストレスが大きい病気です。患者さんは、治療に、日常生活に、日々頑張っていることと思います。
しかし、日々の努力で、「皮疹がかなり治ってきた!」と喜んだのもつかの間、これまで効果があった治療が効かなくなり、症状が悪化してしまうことがあります。
乾癬は、体内の免疫バランスの異常によっておこる、炎症性の皮疹やかゆみを伴う病気ですが、最近では皮膚だけに留まらず、心筋梗塞などを引きおこす可能性のある全身性の病気であることがわかってきました。
この病気は喫煙やストレス、肥満、高脂血症などのメタボリックシンドローム、乾燥など、さまざまな要因で悪化します。
皮疹が広がったり、かゆみが強くなったり、手足の指先の関節に腫れや痛みを感じたりしたとき、新しい環境に慣れない、仕事が忙しい、飲酒の機会が増えた、生活が不規則になったなど、思い当たることはありませんか?
もちろん原因が思い当たらないことも多いのですが、乾癬は良くなったり悪くなったりを繰り返す病気で、長期にわたるマネージメントが必要になります。
一生懸命、薬を塗っても塗っても、良くならないときなど、悲観的な気持ちになりがちですが、そのようなときはあきらめずに、担当の医師や看護師、薬剤師に相談してみましょう。あなたに合った治療法が見つかるはずです。
乾癬の治療では、患者さんの状態やライフスタイルに合わせて最適な治療法を選びます。
治療法の種類
治療法には塗り薬、飲み薬、光線療法、注射剤と、大きく分けて4種類あり、これらの治療法を単独、あるいは組み合わせて治療を行います。
それでは、それぞれの治療法についてみていきましょう。
【塗り薬】
塗り薬は乾癬で基本となる治療法です。
塗り薬にはステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬、両剤を混合した配合剤の3種類があります。
- ステロイド外用薬
ステロイド外用薬には、主に炎症を抑える作用があります。速効性がありますが、長期間の使用により、皮膚が薄くなったりする場合があります。
- ビタミンD3外用薬
ビタミンD3外用薬は皮膚の細胞が過剰に増えるのを抑えることで皮膚を正常な状態に導くお薬です。ステロイド外用薬に比べ、効果がでるまでに時間がかかりますが、長期使用の安全性に優れています。
- 配合剤
配合剤は、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を単独で塗るよりも高い効果が得られます。
いずれも皮疹に直接塗ることで効果を発揮するお薬であり、きちんと塗り続けることが大切です。
塗り薬の種類とまとめ
ステロイド外用薬 |
- 主に炎症を抑えるお薬で、効果が早くあらわれます。
- 長期間使用すると、皮膚が薄くなったり、毛細血管の拡張がみられたり、感染症をおこしやすくなることがあります。
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ビタミンD3外用薬 |
- 主に皮膚の過剰な増殖を抑えるお薬です。
- ステロイド外用薬に比べ、効果が出るまでに時間がかかります。
- 塗った部位にピリピリとした刺激症状があらわれることがあり、まれに高カルシウム血症や腎機能障害がおこることがあります。
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配合剤 |
- ステロイド外用薬とビタミンD3(ディースリー)外用薬を合わせたお薬です。
2つの外用薬を合わせることでより効果的になります。
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【飲み薬】
服用が簡便な飲み薬には、PDE4阻害剤、レチノイド製剤、免疫抑制剤、疾患修飾性抗リウマチ薬の4種類があります。
- PDE4阻害剤
PDE4阻害剤は免疫のバランスの乱れを整えることで炎症を抑えて、乾癬の症状を改善します。塗り薬で十分な効果がみられない、難治性の皮疹がある患者さんが対象となります。
- レチノイド製剤
レチノイド製剤は皮膚の過剰な増殖を抑えることで、乾癬に効果を発揮します。服用中は避妊が必要です。
- 免疫抑制剤
免疫抑制剤は免疫に関する細胞の働きを抑えて、炎症を抑制し、乾癬を改善するお薬です。効果が早くあらわれますが、血圧上昇や腎機能障害などが起こるおそれがあり、定期的な検査が必要です。
- 疾患修飾性抗リウマチ薬
疾患修飾性抗リウマチ薬は、免疫異常を改善し、乾癬に効果を示すお薬です。肝障害、骨髄抑制がおこる恐れがあり、定期的な検査が必要です。また、治療を受けることができる施設は限られています。
- TYK2阻害剤
免疫機能に関与する酵素を標的にした経口薬です。光線療法や他の内服薬で効果がみられない、難治性の皮疹がある、膿疱がある患者さんが対象となります。免疫の働きを抑えるため、感染症にかかりやすくなる場合があります。
このように、それぞれ特徴がありますので、患者さんのご希望に沿ったものを選択します。
飲み薬の種類とまとめ
PDE4阻害剤 |
- 免疫バランスの乱れを整え、炎症を抑えて乾館の症状を改善するお薬です。
- 塗り薬で十分な効果がみられない、難治性の皮疹がある患者さんが対象となります。
- 患者さんによって、効果が出るまでに時間がかかります。
- 服用初期に吐き気や下痢、頭痛などがおこることがあります。
- 妊娠または妊娠している可能性のある方は服用できません。
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レチノイド製剤 |
- 主に皮膚の過剰な増殖を抑えるお薬で、比較的効果が早くあらわれます。
- 皮膚や爪が薄くなったり、骨の障害・骨粗鬆症がおこることがあります。
- 肝障害や腎障害のある方は服用できません。
- 服用中に子供ができると、胎児に奇形が生じるおそれがあります。
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免疫抑制剤 |
- 過剰な免疫反応を抑えるお薬で、効果が早くあらわれます。
- お薬によっては血圧上昇や腎機能障害などがおこることがあるため、定期的に血圧測定、血液検査を行います。
- お薬によっては妊娠または妊娠している 可能性のある方、授乳中の方は服用できません。
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疾患修飾性抗リウマチ薬 |
- 過剰な免疫反応を抑えるお薬です。
- 肝障害、骨髄抑制がおこることがあるため、定期的に血液検査を行います。
- 妊娠または妊娠している可能性のある方、 授乳中の方は服用できません。
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TYK2 阻害剤 |
- 免疫機能に関与する酵素を標的にした経口薬です。
- 光線療法や他の内服薬で効果がみられない、難治性の皮疹がある、膿疱がある患者さんが対象となります。
- 免疫の働きを抑えるため、感染症にかかりやすくなる場合があります。
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さらに、光線療法と注射剤ですが
【光線療法】
光線療法は皮膚に紫外線を照射して、皮膚の細胞の異常な増殖や炎症を抑えることで乾癬の症状を改善する治療法です。広範囲の皮疹に効果を示し、お薬を減らせる可能性がありますが、より効果を発揮するためにはできれば週2回以上通院して、頻繁に治療を受けることが望ましいとされています。
光線療法のまとめ
- 症状のある部位や全身に紫外線を照射することによって、皮膚の異常な細胞増殖や炎症を抑える治療法です。
- 紫外線にはいくつかの種類があり、長波長紫外線(UVA)や中波長紫外線(UVB)が使用されます。
- 治療を受けるには、1週間に数回程度の通院または入院が必要になります。
- 色素沈着や日焼けがみられることがあります。
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【注射剤】
生物学的製剤(注射剤)は乾癬の病態に関与するサイトカインに作用して、乾癬の症状を改善します。高い皮疹改善効果が得られますが、治療を受けられる施設は限られています。
注射剤(生物学的製剤)のまとめ
- 乾癬の病態に関与するサイトカインに作用することによって、乾癬の症状を改善する治療法です。
- 現在、国内では複数の生物学的製剤が使用可能ですが、いずれも点滴または皮下注射により投与します。
- 免疫の働きを抑える作用があるため、 感染症にかかりやすくなる場合があります。
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あきらめず、あなたに合った治療法を
「家族と温泉旅行に行けるようになりたい」、
「治療にかかる時間を短くしたい」
など、患者さんそれぞれにご希望があると思います。
症状の程度だけではなく、ライフスタイルや希望を考慮し、主治医と一緒に、あなたが満足できる、適切な治療法を探すことが乾癬を改善させる近道です。
気になることや不安なことがあったら医師に相談しましょう。
現在、乾癬の治療選択肢は増え、適切な治療を行うことで、長期間乾癬のない状態を保てるようになってきました。
あきらめずに、気長に一緒に頑張っていきましょう。